インタビュー企画第1回もうやんカレー代表取締役 辻 智太郎さん

インタビュー企画第2回目は、
『もうやんカレー』の代表取締役、辻 智太郎さんにインタビューをさせて頂きました。

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厳選された野菜と25種類以上ものブレンドスパイスを使い、完成まで2週間をかけて作るカレーは、まさに健康食品と言えます。
記憶に残る、価値のあるカレーを提供し続け、現在都内に6店舗を構える『もうやんカレー』。
今回はその誕生の秘密、起業に至るまでの辻さんご自身の物語を御伺いしました。
http://moyan.jp/

 

 

◎起業に至るまでに様々なことがあったと思います。
起業される方の中には、親御さんが起業家で幼い頃から影響を受けていた、
という方も多くいらっしゃいますが、辻さんのお父様はどんな方でいらしたのですか?

今の商売をするにあたって、親の影響は大きいですね。うちの父は関西の三重県出身で、母は東京の人です。
父は東京に出てきて建築の仕事をした後にゼネコンに入って働き、若い頃にかなり良いポジションについていました。
父は当時、年齢の割にとても優雅な生活をしていたと思います。
ですが仕事の都合上、食べたり飲んだりが多くなってしまい、凄く太ってしまいまして。
そしてついに身体を壊してしまったのです。

元々父親は柔道・剣道・空手、全部3段以上もっている格闘家だったのですが、
盲腸になってもメスが通らないような状態でした。
それがまだ29歳くらいでした。それでお医者さんに「このままの生活をしていたら死にますよ。」と言われて・・・・・

そんな時、父は当時ではまだ珍しかった食事療法というのに出会いまして、
食べるもの、飲むもの、体に入れるものを良くしないと健康状態は良くならないという事を学びました。

そしてそれを真摯に実践していったのです。そうしたら、
薬を飲んでも回復しなかったものが、みるみる良くなっていった。それで命を救われたんです。

そして食事療法に魅せられた父は、会社を辞めて健康食品のお店を始めました。それは僕が小学校4年生の時ですね。
そこで一気に生活スタイルも変わりましたね。当時は100畳以上ある広い家に住んでいたのですが、
会社を辞めた途端に20畳足らずの狭い家に家族全員で住むようになりました(笑)

それがまた商売が上手くいけばいいのですが、
ゼネコンで大金を扱っていた父がいきなり100円200円の仕事なんて出来ないんですよね。
だからあっという間に、お店の経営は期待に反して悪く成っていきました。
商売は商売だから、お金にならなければ仕方がないですよね。

人出が足りないっていうことで、学校に行く前にタマゴを運ばされるなど、僕自身も色々やらされました。
ただ、バイト代として一日50円お小遣いを貰っていました。
小学生だったので意外と嬉しいものでしたけどね。

当時は毎日、仕事の事について父から聞かされていました。
小学生だったので、さっぱり分からなかったですが(笑)。
でもレジを打ったり売り上げを計算したりしているうちに、
お金がどう動いているのかを体感しながら学ぶことが出来ていました。
そのせいか、小学生ながら金銭感覚は人一倍ありましたね。

当時僕の周りではゲームが流行っていて、5000円するゲームウォッチというゲームが欲しかったのです。
そこで5000円を捻出する為には何をしなければならないのかを考えたりしていました。
どれだけの事をすれば5000円にたどり着くのかを考えていました。
そのときに一万円を稼ぐ事は大変な事なのだと知りましたね。

◎当時のその経験は今に繋がっていますか?

繋がっています。
当時は食べるものが全然なかった。だからお店で売れなくなった、余った食材をよく食べていました。
賞味期限切れの食材はすっぱくなって、食べられたものじゃないですよ。
うちは無農薬のものを扱っていたので、悪くなるのも早かったのです。
それをいかに上手く調理するかをいつも考えていました。当時は祖父がうまく料理してくれていましたね。
お金も無かったので誕生日プレゼントも買ってもらえなかったです。
でも、無いなりの工夫を覚えましたね。
日本は豊かですからお金があれば何でも食べることが出来るし、買えますが、逆にお金がないと何も出来ないんですよね。
人に寄付する事も出来ないし、何かを教える事も出来ない、与える事が出来ない。
無い無いづくめです。まずは自分がご飯を食べていないと何も出来ない。
当時のこういった経験は、起業する上でのハングリー精神になりましたね。

◎若い人の起業に関して辻さんはどうお考えですか?

起業するからには、儲けを出さなければ始まりません。
ですから綺麗ごとばかりでは、始められない事だと思います。
自分のやりたい事をやってそれが事業として成立すれば一番良いと思いますが、
まずは始めた事業で自分がちゃんと生きていけるようにならなければいけませんから、本当に大変なことですよ。

◎なぜカレーのお店を開かれたのでしょうか?

もうやんカレーをはじめる前、僕はスポーツに関連の仕事をしていました。
トレーナーに近い仕事です。その経験から、スポーツにおいて食事というのは非常に大切な要素で、
同じスポーツをしていても、食べているものによって出せるパワー、つまり体力が全く違ってくると知りました。
例えば、徹夜をして海に行って、サーフィンをするとします。
その時、食べる朝食がマックなのか、モスバーガーなのか、フレッシュネスなのかでは全然効果が異なるということです。
マックだと8時頃で体動かなくなります。モスとフレッシュネスは昼まで。
ところが、家でしっかりしたものを食べれば、体力は夕方まで充分に持ちます。

食べるものとスポーツは非常に密接な関係があります。食べたものは全て自分の体になっているわけですから。

僕は昔、寮に住んでいまして、近くにある高級食材が売っているスーパーで値段を見ずに様々な食材を買ったんですよ。
それを毎日調理して食べていたんです。
そして、ある時に、野菜を煮込みに煮込んで、ドロドロのカレーのようなものを作った事がありました。
味付けは別として、それを毎日食べていたんです。さらに、当時は若かったこともあり、
面倒で、朝食は食べていなかったのですが、夕食が余っていたら自然と朝にも食べるようになりました。
その、ドロドロのカレーのようなものをです。

そうしたら、すごく体の調子が良くなっていったんです。
これは面白いなと思って料理について本格的に勉強をしていったら、
体がよく動く料理が野菜たっぷりの”カレー”だと解ったんです。
自分が作っていたのは、カレーだったんだと、その時に解ったんですね(笑)
それから毎日研究して、体によいカレーを作っているうちに、
トレーナーの間でも人気メニューになって。だんだんこれで商売が出来ないかなって思い始めたんですよ(笑)

こうしてカレーに出会ったとき、子供のころ親の健康食品店を手伝いながら、
さんざん『将来は自分で商売しろ』と言われていたのを思い出しましたね。
そこから起業を真剣に考えるようになりました。
それから毎日のように、夕食はカレーを食べにいって研究しました。
そこで一つの気づきが生まれました。それは『日本のカレーは毎日食べられる』ということ。
例えばインドカレーを、日本人は毎日、食べられないんです。おいしいけれど、毎日は受け付けられなくなる。

でも、日本のカレーは日本人の風土や食文化に合っているということを、
様々な研究を進めるうちに自分なりに確信しました。

この商売なら一生涯の仕事に出来る。いや、してみせる。
そこからは、日本のカレーをとにかく調べて調べて調べぬきましたね。

これが、僕がこの店を開く、このビジネスを始めたスタート地点の話です。
私はもうやんカレーさんに結構頻繁に通っているのですが、
カレーの味を1年中一定に保つ事は、とても難しいと思うんです。
季節によって野菜の甘みが違ったりしますし、
どのように味を維持しておられるのかずっと気になっていたんですが、
教えて頂けますか?
うちの場合は、野菜はいい時期に収穫したものを冷凍保存して、
1年通して使っています。
順次仕入れるのではなくて、質の良いものを、保存しておいています。
たとえばカレーに入ってる玉ねぎですが、新玉ねぎは水っぽくて使えないんです。
水分が多いから大鍋で炒めるときに跳ねちゃって、大変なんですよね(笑
そういう意味で季節や産地による野菜の状態を研究することはとても大切でした。
リンゴなんかは煮詰めてピューレ状になっているものを使っています。
煮詰めてあれば、鮮度も変わりません。
実はりんごは酸味の強いものが、カレーには適してるんですよ。
フライパンで炒めて、どのリンゴの、
いつ収穫されるものが美味しいのかを食べ比べたりしましたね。
それでは、カレーにとってお野菜やお肉とおなじくらいに大事な
”スパイス”についても、
美味しさの秘訣があるのですか?
スパイスもやはり同じで、いい時期に収穫されたものを冷凍保存しています。
僕の考えでは、カレーのスパイスは3つあれば充分なんです。
マサラとか、香りの良いものをいっぱい使ってあげるといいですね。
本来、カレー作りの行程からいうと小麦粉にバターを炒めて、
そこにスパイスをいれるんですが、
うちは温めた油にしみ出させる形でスパイスの味をだしています。
スパイスの香りがしっかり油にしみて、あの風味ができているんですね。
やはり油にもこだわりがあるのでしょうか?
油はオリーブオイルなんですが・・・
ここでちょっと家庭でも使えるアドバイスなんですが、
オリーブオイルは絶対1リットル2000円以上のものを使ったほうがいいですよ。
味が格段に違いますから。
スーパーなどでは安いオリーブオイルも沢山売っていますが、
これは確実に言える事ですね。
塩とか、油とか、世の中にはそれはそれは上質な、美味しいものがありますよ。
高いけど(笑
やはり商売をしている中で、上質なものに変にこだわりだしてしまうと、
本当に原価が上がってしまうんです。
だから良いものの味をキチンと知った上で、
一定以上のものを上手に選んで使うのが、僕はいいと思いますね。

いつか原価など関係なく、
「絶対にこれが一番ウマい!」という食材やスパイスだけで
究極のメニューを作ってみたいですね。

どなたか、パーティーのお料理などにいかがですか?(笑

辻さん、ありがとうございました!

2014-09-16 | Posted in gallery, intaviwNo Comments »