ノマド・グローバルCEO桐山一人のコラム【相続大増税時代の新常識 損しないために今から出来ること】
本年1月より、改正相続税法が施行され、いよいよ「相続大増税時代」の序章が始まった。 これは、有名人やお金持ちの人々だけの問題ではなく、これまで課税されなかった層の人たちにまで影響を及ぼす大きな問題である。今後、この負担増加にどのように対処していくべきなのかを考えてみたい。最近は、いろいろなところで「相続セミナー」が開催されている。今から出来ることや意外な落とし穴などに注視してみよう。 全体的に観ると、現在の中高年層の人たちに比べて若年層の人たちは、収入も低いし、先の年金も多くは見込めない。もしかすると将来的に年金を貰えない可能性さえある。他人事ではなく、手遅れに成らないうちに、しっかりと自身のマネー戦略(相続対策)に着手しておくことが肝要である。
今年からの相続税制改正で大きく変わったポイントは二つ
一つ目は、改正前の最高税率は50%であったが、これが55%に上がったこと。 二つ目は、非課税となる筈の「基礎控除」が40%カットされたことである。 これらの改正により、課税対象者は改正前に比べると1.5倍に増えると言われている。さらには、実際の課税額においても大幅な負担増が予想される。 例えば、相続財産が1億円で配偶者と子供1人の場合、夫の死亡と妻の死亡に伴う2回の相続に係る相続税は、改正前の175万円から、545万円と、370万円の負担増となる計算である。 1200兆円以上の借金をかかえた我が国日本で、政治家の人たちが危機感を持たずに構えておられることに納得も出来る。日本人の預貯金総額は1400兆円以上と言われているが、その大半以上の預金者が高齢者の方々である。 日本人の寿命が延びているとはいえ、これから凄い数の高齢者の方たちが他界されていく現状を推し量ると、法人税を小さく下げて相続税を大きく増やすといった政府の画策は道義的な解釈は別として、数字的には税収の帳尻が合ってくるのであろう。 「相続税」というシステムの無い海外の各国へ移り住んでいく日本人が年々増えていくことにおいては、仕方のないことかも知れない。 これより数回に分けて、損しない・もめないために今から出来ること。そして課税対象になる資産をどのように減らすことが出来るのか。について詳しく述べていきたい。
生前贈与で小さくコツコツ始めよう
どのようにして、課税対象になる資産を減らすことが出来るのか。やはり王道は「生前贈与」である。 既にご承知のとおり、年間110万円以下の贈与は非課税である。毎年こつこつと移転して、10年で1000万円以上、18年だと2000万円近い相続財産を減らすことが出来る。 ただ税務署からは「名義預金」として目を付けられることもあり、親が他界した後に相続税を納めなくてはならないケースもあるので注意が必要である。 親が子供のために子供名義の口座を作って預貯金をしていることを当の子供が知らない又はよく理解していないということが、日本ではよく有りうる。杓子定規な言い回しになるが、贈与は契約行為によって成立するものである。あげる側だけではなく、もらう側の人も承認していなければならない。 肝心なことは、贈与の際には親子であれ契約書を交わしておくようにしたい。いつ、いくら贈与をしたのか、贈与の事実を親子で互いに確認して、親と子がそれぞれが署名・捺印をする。その都度きっちりと書面を残すようにする。その行為によって子供の方もしっかり認識出来るようになる。 贈与の契約書類(ひな形)は、インターネットからダウンロードすることも出来るが、後から作成したものではないかと要らぬ疑いを掛けられないためにも、公証役場で確定日付をもらうことをお勧めする。 そして、通帳や印鑑は子供に管理させたり、あえて基礎控除の110万円を超える金額を贈与して申告しておくと、贈与の証拠にもなり、課税対象となるリスクは減らすことが出来る。 その他、最近では生前贈与に特化した信託銀行などの信託商品にも人気が集まっている。誰にいくら渡すのかを指定しておけば、受け取る側にも確認して指定の金額を送金する。銀行が贈与を取り持つことにより、確実に記録を残せるし、毎年の贈与手続きの手間暇を軽減出来る。面倒くさがりの人にはうってつけの商品である。(執筆者:桐山 一人)